始まり

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 男の問いに再度自分の名を告げる。 「あー…じゃあ俺の名前は?」 「知らん。」 「マリク・アスター、聞き覚えないか?」 「残念ながら。」  男、もといマリクはうぅと唸り頭を抱えた。 「じゃあ、クラウドであってクラウドじゃないお前は何者だ。」 「黒崎奏。19歳。短大生。」 「タンダイセイって何だ?」 「短期大学学生の略。」 「訳が分からん。出身地は?」 「日本。」 「ニホン?あー…、どこの大陸にあるんだ?」 「大陸?日本は島国じゃないか。」 「おい、えーっと…ク…ク…クロサキ・カナデ!お前の言っていることは全然、全くもって理解できない。クラウドはどうした。多重人格なのか?別人格ならクラウドを出せ、クラウドを。」 「自分もアスターさんの言いたいことはわからない。自分はクラウドじゃないし、クラウドなんて知らない。」 「…マリクでいい。クラウドに他人行儀にされるのは違和感がある。」  その後は色々と話し合った。しかし、自分とマリク、お互いの会話はどこまでも平行線を辿るだけで、交わることはおろか擦ることさえなかった。  お互いに納得する答えに行き着いたときには、とっくに日付を跨ぎ越し、空高く太陽が輝いていた。
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