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「で、だ。クロサキ・カナデ、ここでお前はクラウディオ・ヴァリアーノでなければならない。だから俺はお前を今まで通りクラウドと呼ぶ。それと、クロサキ・カナデ、一人称は俺にしろ。今まで俺だったからクラウドに自分なんて言われると違和感がある。」
「わかったよ。俺、ね。で、他、クラウドと違うのは?容姿ぐらいか?」
そう、自分とクラウディオの容姿は全然、全くといっても過言ではないほど違うものだった。自分は黒髪黒目、身長166cmの、自分で言うのもなんだが、どこにでもいそうな日本人だ。それに対し、クラウドは金髪碧眼、身長175cmはあり、ほどよく鍛えられた体躯の美男子だった。
「クロサキ・カナデの容姿や人間性については、今話し合った以上のことを知らないから何とも言えないが、クラウドは人見知りが激しくて、あまり喋らないやつだった。」
それはある意味好都合だ。自分が喋りさえしなければ中身が入れ替わっているなんて他人に気付かれる事は無いだろう。
「後、いつでも俺といろ。そっちの方が何かあってもフォローしやすい。」
「わかった。」
クラウドこと自分と唯一交流があったのはマリクだけらしい。マリク曰く、見習い騎士の時にはクラウドの教官として、優しく、情熱的に指導していたらしい。そのことに関して、一瞬、背筋がぞわっとしたのは黙っておくことにする。
「時間的にはとっくの昔に仕事が始まっているんだか、今更行きたくないな。」
カーテンの隙間から見える外を見つめながらマリクが呟いた。
「腹も減ったしメシでも食いに行くか。」
自己完結したらしくマリクは立ち上がり歩きだす。それを床に座り込んだまま見送ろうとすれば、大股で自分のもとまで戻って来て言った。
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