始まり

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 活気ある市場を抜け、閑静な住宅街へ到着するまでにマリクは、老若男女関係なく色々な人に話しかけられていた。そして、いろいろ買いこんでいた。両腕に麻袋を抱え、自分にもオレンジとリンゴとジャガイモの詰められた袋を一つ持たせている。 「やー、買いすぎたな。」  この状況を見てあっさりとそう言ってのける。 「言われるままに買いすぎだ。」 「まあ、そう言ってくれるな。」  少し困ったような顔でへらりと笑った。  そのまま少し歩く。 「あそこに見える家だ。」  両手が塞がっているために顎で示した。 「ああ、あのお化け屋敷みたいな…。」 「違う!その向かいから手前、三軒目の家だ。」  自分の言葉を遮るようにして訂正された。 「近所にお化け屋敷のある場所を選ぶとはなかなかの強者だな。」 「お前な…。まあ、お化け屋敷というのは、あながち間違いでもないな。今このあたりで人が住んでるのは数えるほどだろうよ。」  声のトーンが二段階ほど下がった。 「どういうことだ?」  マリクの顔を覗き込み、その顔色を窺う。 「昨日、この国が他国と戦争中だと言っただろう。」 「ああ。」 「疎開中だ。この国の北にあるモニに行っている。」
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