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「モニ?」
「山の名前だ。この国の生活のすべてを支えている山だな。あそこから良質の鉱山資源が採れなければイデアは早々に滅びていただろう。見ての通りここは山岳地帯の国だから、農作物なんかはほとんど育たん。俺が持ってるこれもクラウドが持ってるそれも大半が高い金払って輸入してきた品だ。資源を輸出して得る金のほとんどは王族の物で、鉱山で働いている奴らが貰う金なんて雀の涙よりも少ないだろう。実際、国民の生活は良いとは言えん。俺やクラウドみたいに騎士として国につかえている奴らは、鉱山働きと違って確実にそれなりの額の給金が貰えるし、家も保障されてる。一般市民よりずっと金回りは良いし裕福だ。」
「だから、買うのか?」
自分から目をそらしてマリクは続けた。
「こんなことをしたところで、国民は税金という名目で国に金を吸い上げられる。俺だってわかってるよ。これがただの自己満足ってことぐらいさ。」
マリクの足が止まる。
「ぱぁぱ、お帰りなちゃい。」
可愛らしい子供の声が聞こえた。そちらを見れば金髪に緑の目をした幼い女の子が全身で喜びを表すように飛び跳ねていた。
「可愛いだろう。」
耳元で声がした。横を見れば気持ち悪いぐらいににやけた顔のマリクがいた。さっきまでのシリアスはどこに行った。
可愛らしい女の子の声に反応してその奥で花壇の手入れをしていた女性が振り向いた。
「美人だろ。俺の嫁。」
再び自分の耳元で呟くと笑顔で娘と奥さんに呼びかけた。
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