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第1話 1年後
ここは……どこだ……?
真っ暗で何も見えない……。
「……充」
誰かが俺の名前を呼んでる……。
「……充」
また呼んでる。
この声……誰だ……?
いや、どこかで聞いたことのある声……。
憶えてる……この声……これは……。
「…………父さん……?」
充が呟いたその時、真っ暗だった周りが一気に光を帯び出した。
「……っ!」
余りの眩しさに、充は眉を細めて両腕で目から光を防ぐ。
しばらくして光は落ち着いていき、そこは低い崖付近だと分かった。
「ここは……?」
見上げてみると、夜なのが分かる。
目の前には波が落ち着いている海の光景。
そして、シカの姿と化した自分の父親が充に背を向けて、海を見つめるように立っていた。
「父さん?こんな所で何してるんだよ」
充が父親に近付こうとしたその時だった。
「動くな」
「?」
突然の父親から発せられた言葉に、充は立ち止まる。
「そこから一歩も……俺に近付くな……」
充は理解出来なかった。
「……?意味が分からないよ。近付いたらダメな理由があるのか?」
「充……」
「っ!?」
充の尋ねの途中で、父親はゆっくりと振り返る。
父親の顔を見て、充は目を大きく見開いた。
顔が……全面血だらけだったのだ。
「頼むから……俺に近付かないでくれ……!」
「……ああああああああああっ!」
充は恐怖の余り、叫びだした。
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