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「ゆっくりお別れって訳にはいかない、か。もうすぐ時間みたいだ」 世界が少しずつ色褪せて、崩れ落ちて、消えていく。 「もう一人の僕。体に気をつけて。お元気で。忘れるなよ。忘れないからな。嫁さんと仲良くしろよ。ペットも大事に育てろよ。植物の世話も忘れるな。それから、それから」 こっちの世界からの干渉がなくなるだけ。 僕の視界から消えるだけ。 この世界との繋がりが、消えるだけなのに。 「泣くなって言っただろ。どうしようもなく泣き虫な俺」 「そっちこそ泣くなって。救いようがないくらい泣き虫な僕」 静かに世界が白くなって消えていく。 そして、もう一人の僕も、見えなくなった。
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