第2話 恐怖への序曲

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 体が反応する逃げろと! だが、かなしばりにあって動けない!! クソ死んでたまるか! 俺は生きてやる! 俺には夢があるんだ! こんな事で死んでたまるか! 悪霊よ……この場から去れ!! 『ぐぁ……』 俺の首を何かが触っている……確かな重量感がある……。 寒気とは違う感覚だが、微妙に暖かくて少し痛みを伴う。 【ピシピシ! パキパキ! バギィ!】 また寒気が襲って来た。 そしてその寒気を暖かい感覚が拭い去ってくれる。 そうか……この温もりは、俺の守護霊が後ろから、手をさしのべてくれているんだな。 【ビシ! パキィ!】 まだラップ音が鳴り止まない……。 ドアの前に凄まじいプレッシャーを感じるが、まだ部屋に入って来られないようだ。 【ドンドンドンドン!】 物凄い勢いでドアを叩いている……。 邪悪な者がいる! 開ければ死ぬ! 怖い! 誰か助けて! 声が出ないのに必死に叫んだ。 背中に手を当ててくれている感覚も、より強くなった。 [チュンチュン!] 小鳥の鳴き声が聞こえる……朝が来たんだ。 【ドンドン!! ズルズル……】 どうやら、諦めて帰ってくれたようだ……。 守護霊に感謝しなくては。体が動く……慌てて、全身の鳥肌を触って取りのぞいた。 いつも触ると鳥肌が消えるんだ。 俺は背中を触ってみた……。 『うわぁ!』 背中が水をかけられた様に大量の汗で濡れていた。 充は朝日を全身に浴び大きく伸びをした。 全身の筋肉がほぐれる感覚で少し楽になった様子だ。 だが、その端正で整った顔に大きなクマが出来ていた。 それだけ強い精神的苦痛が肉体にまで表れているのだろう。
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