第2話 恐怖への序曲

9/49
前へ
/567ページ
次へ
 怖かった……良く生きられたな……汗を流さないと。 昨晩の悪夢を思い出して寒気が取れない体と疲れた顔を少しでも良くする為に充はシャワーを浴びた。 今日も学校に行かないと……。 充は野球部の部長だから体調が悪くても学校は休まなかった。リーダーシップを取る者は容易に休めないのだ。 【シャー!】 熱いシャワーが充の鍛え抜かれた筋肉の疲れを取る。精神的にもお湯で清められた感じがするのか充の表情が和む。 しかし怖い目に会ったら、常に回りに気を配ってしまう。 充は時折背後の気配を気にして振り向いた。だが、誰もいない。浴室のガラスの戸があるだけだ。 シャンプーを洗い流して、リンスを付ける。 でも気のせいか、視線を感じた。 また背中に悪寒が走った!! まだ朝なのに? 鏡にも何も写っていない……。 あぁ……頭がおかしくなりそうだ……。 疲れてぐったりとして頭を下に向けた。 綺麗なタイルに充の顔が映った。 頭の上に黒い影が見える。 気のせいだよな。 洗い流して、風呂を出た。 さっきはいたな……。 熱いお湯をかけて耐えたが。 そんなに寒気を感じなかったので、霊に敵意が少なかった様だな。 霊の敵意の度合いで、寒気と、鳥肌の度合いが決まるらしい。 考え事をしながら軽く充は朝食を済ませて洗面台で身支度を整えて学校に向かった。既に昨日の恐怖に脅える影ははどこにもなかった。いつもの生気溢れる顔に戻っている。  昨日のいや……今日来た霊の敵意は半端では無い!! 今日は、友達の家に泊まる事にしよう。 一人でいるのが、怖いから。
/567ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12668人が本棚に入れています
本棚に追加