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まさか、菊正宗の彼女も失踪していたなんて……でも、こんなに近くにも被害者がいるなんて。
『なあ菊正……辛いかも知れないけど、彼女が失踪する前の話を聞かせてくれないか?』
「これと言ってなにも……」
菊正は考え込んでしまった。
だが、何かを思い出したのか、顔を上げた。
「そう言えば……俺が風呂に入っている間に着信があったんだ。その時に出ていれば……。チクショウ!!」
菊正宗は、泣いてしまった。
ベンチを殴った悔しがっている。
俺は何も言ってやる事が出来ない。
ん!? 待てよ留守番電話は聞いたのか?
普通なら緊急事態なら伝言を残す筈だ……。
『菊正! 留守番電話に彼女の伝言残ってないのか?』
菊正は、携帯を調べていた……。
そして顔色がまた悪くなった。
死人の様に真っ白だ……血の気のない顔だ。
「あったけど……怖くて聞けねえ……よ。充が、代わりに聞いてくれるか?」
『ああ……わかった……』
俺は、寒気と悪い予感を感じながら再生ボタンを押して、携帯を耳に静かに当てた。
これが地獄の始まりだった……。
もう引き返せない蟻地獄への道しるべだった。
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