第2話 恐怖への序曲

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 念体が、俺の顔を両手でガッシリと掴む。 とても冷たい手だ。だが、はっきりと感触がある。 その手に力が加わる……俺も力を入れて、首が曲がらないように耐えるが、無駄な抵抗。 これ以上は耐えられない……。 『ぐぁ!!』 首の神経が切れる! 【ブチブチッ! ゴキィ!】 「充!? 何で首をそんなにヒネってるんだ! 死んじまうぞ!」 まだ、俺が怨体に襲われているのを菊正宗が、気がついてないのか? 【鈍い人ね~! 貴方の友達は、死ぬのよ! 助けなさいよ!】 「ふざけるなよ。充……ビックリ人間じゃあるまえし。ってうわぁ!! 充の前に誰かがいるぞ~!?」 菊正宗が、幽霊の肩に触れたようだ。 見えないけど、感触はわかるらしい。 【フフフ……私が見えないの? 馬鹿ミタイにミエルわよ。次はアナタの番だカラね!】 「また幽霊が来てるのか!? 充を離せよ! 何とか言えよ!」 そして、菊正宗には、怨体の声が聞こえていない。 霊感ないと、こんな感じに見えるのか。 平和な奴だ。 【散々言っているんだけど……お姉さん私からもお願いします。お兄ちゃんを助けてあげて下さい!】 可愛い女の子の霊が、助けを求め泣いている。 それでも、念体の力は緩まない。 首の骨も後少しで……この激痛から早く解放してくれ……意識がまた飛びそうだ。 いっその事、早く楽にしてくれと思ってしまう。 充は、諦めたまま。自分の死に悲しむ人がいるというのに。 あの人も、この光景を見たのだろうか? 【ピリリリ】 気を失いかけた時に、誰からメールが入った。 誰だろう……もうこれが、人生最後のメール受信だな。 携帯をやっとの思いで取り出した。 発信先は、初めてのモバ友だった。 珍しいな。 最後の相手にふさわしい。 曲がった首が丁度よく、充はズボンのポケットから出した携帯電話を見て、笑った。 相手は、カノンさん。 僕達に残された最後の砦。 あの人の一番大切な人であり、またカノンさんにとっても一番大切な人。 でも、今は……。
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