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念体が、俺の顔を両手でガッシリと掴む。
とても冷たい手だ。だが、はっきりと感触がある。
その手に力が加わる……俺も力を入れて、首が曲がらないように耐えるが、無駄な抵抗。
これ以上は耐えられない……。
『ぐぁ!!』
首の神経が切れる!
【ブチブチッ! ゴキィ!】
「充!? 何で首をそんなにヒネってるんだ! 死んじまうぞ!」
まだ、俺が怨体に襲われているのを菊正宗が、気がついてないのか?
【鈍い人ね~! 貴方の友達は、死ぬのよ! 助けなさいよ!】
「ふざけるなよ。充……ビックリ人間じゃあるまえし。ってうわぁ!! 充の前に誰かがいるぞ~!?」
菊正宗が、幽霊の肩に触れたようだ。
見えないけど、感触はわかるらしい。
【フフフ……私が見えないの? 馬鹿ミタイにミエルわよ。次はアナタの番だカラね!】
「また幽霊が来てるのか!? 充を離せよ! 何とか言えよ!」
そして、菊正宗には、怨体の声が聞こえていない。
霊感ないと、こんな感じに見えるのか。
平和な奴だ。
【散々言っているんだけど……お姉さん私からもお願いします。お兄ちゃんを助けてあげて下さい!】
可愛い女の子の霊が、助けを求め泣いている。
それでも、念体の力は緩まない。
首の骨も後少しで……この激痛から早く解放してくれ……意識がまた飛びそうだ。
いっその事、早く楽にしてくれと思ってしまう。
充は、諦めたまま。自分の死に悲しむ人がいるというのに。
あの人も、この光景を見たのだろうか?
【ピリリリ】
気を失いかけた時に、誰からメールが入った。
誰だろう……もうこれが、人生最後のメール受信だな。
携帯をやっとの思いで取り出した。
発信先は、初めてのモバ友だった。
珍しいな。
最後の相手にふさわしい。
曲がった首が丁度よく、充はズボンのポケットから出した携帯電話を見て、笑った。
相手は、カノンさん。
僕達に残された最後の砦。
あの人の一番大切な人であり、またカノンさんにとっても一番大切な人。
でも、今は……。
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