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木村誠司は、しばらくスプーンでコーヒーをかき混ぜていたが、覚悟を決めたように真っ直ぐ優を見て言った。
「単刀直入に言う。お母さんとまた一緒に暮らせ。」
虚ろな目で外をぼんやりと眺めていた優は、動揺を隠せず目を大きく見開いたあとに唇を震わせた。
「あんた、何を言ってるのかわかってんのか?」
優は木村誠司を睨みつけながら青ざめた顔で言葉をひねり出した。
「ああ。」
次の瞬間、優の目の前にあったコーヒーカップは、優の手のひらの甲を介して木村誠司の腹部へと勢いよく飛んでいった。
幸い、コーヒーカップの中には既にコーヒーは入っていなかった。但し、ぶつかった後に床に落ち、柄の部分がもぎ取ったように割れた。
2人の緊迫した雰囲気に、店員は声をかけるにかけられず、オロオロとカウンターを行き来していた。
「今度、そんなふざけたことを言ったらぶっ殺す。」
優は木村誠司を睨みつけたままテーブルに拳をぶつけた。
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