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「まあ、落ち着け。そうか。よかった。」
「は?何が?何が良かった?馬鹿にしてんのか?」
震える拳を爪が手のひらに突き刺さるほど握りしめ優はまたさらに怖い顔で木村誠司を睨みつけた。
「いや、そうじゃない。すまん、そうじゃないんだ。」
緊迫したまま時間だけが経過した。
「お客様、他のお客様のご迷惑になりますので。」
お店のマスターらしき人物が、様子を伺いながら話しかけてきた。
「どうもすみません。コーヒーカップも割ってしまって。弁償します。優、とりあえず一旦お店を出よう。」
木村誠司は、懐から財布を出しながら立ち上がった。
優は無言のまま木村誠司とマスターの間を分け入り足早にお店から出て行こうとした。
「あ、こら待てって。」
急いで一万円札を渡し、木村誠司は優を追いかけた。
しかし、木村誠司が外に出たころには、優の姿は既に影も形も見えなくなってしまっていた。
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