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「あなたが悪いのよ。あなたが聡を殺したの。そう、すべてあなたのせい。」
あの女の声が何度も何度も荒波のごとく押し寄せては消える。
「やめろっ!」
目の前に憚るあの女の影を追い払い僕はいつも通り、小型ナイフで壁を斬りつける。
斬りつける斬りつける斬りつける。何度も何度も。
それでも僕はスッキリしない。むしろ、さらに腹立だしくなる。
エスカレートする寸前、暴走し出す僕の感情。
小型ナイフの先を左腕に突きつけ少しずつ手前にひく。
もう既に何本もの細い赤く腫れ上がった線が浮き出ている。
肌色い部分が全くといっていいほど見えない。
肌なのか線上なのか。そんなことはどうだっていいといった無表情のまま優はまた小型ナイフの先を手前にひいた。
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