破壊

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 幾度と無く同じ行為を繰り返し蚓ばれ並みに腫れ上がった左腕をさすっているところで机上にある優のスマホのバイブ音が鳴り響いた。  液晶画面を生気の無い表情のまま覗きこむと叔父の木村誠司からの電話だった。  しばらく眺めた後にゆっくりとスマホを手に取った。  「はい。」  優はこの言葉を三度発した後に電話を切った。  それから3秒もしない内にスマホは優の左手から離れ使用不可の状態に陥っていた。  優の部屋の白い壁は小型ナイフの傷だけでなく、スマホのカバー色が追加された。  「行くわけないだろ、ばーか。」  優の目は鋭く尖り、しかし口元は心持ちゆるんでいた。  ビブラートが効いた鈍い音と共に小型ナイフは優の右手から離れ白い壁に突き刺さった。  数分して、優は狂ったかのように長い間笑い続けた。途中で咳ごみながらも、そんなことを気にすることなく笑い続けていた。     
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