破壊

5/12
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
 どれだけの時間が経過したのか。  優はゆっくりと立ち上がり、出窓にある深緑色のカーテンに手をかけた。  少しだけ開いたカーテンの隅から外を見渡すと、雨はまだシトシトと降り続けていた。  荒々しくカーテンを閉め、真っ暗な部屋でまた椅子に腰掛けた。  「うっ。」    優の目からは透明な液体が微量だが流れた。  「なんだよこれ。やめてくれよ。んなわけないだろ。」    優以外は誰もいない部屋で独り事をつぶやきながら、透明な液体を右手で拭き取った。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!