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ブレンドコーヒーを飲み終わりそうになっても待ち合わせをしている人物がやってくる気配はない。
結局は憂鬱な気分のまま外を眺めて苛々を増幅させていた。
「お代わりはいかがですか?」
最初に注文を聞きに来ていた女性店員が営業スマイル以上の笑顔で立っていた。
「いただきます。」
にこやかにコーヒーカップを差し出すと女性店員は、耳まで真っ赤にしながらも震える手でお代わりのコーヒーを注いでいた。
その手を握り締めながら優は囁いた。
「大丈夫?手が震えてるよ。華奢な君がこんなに重いものを持たないといけないなんて大変だね。」
言い終わらない内に後ろから聞いた覚えのある声がした。
「何をしている。全く、お前と言う奴は。」
その声に反応し、優は即座に握っていた手を離して一瞬顔を引きつらせた。
「遅かったじゃないですか。かなり待ちましたよ。」
ぶっきらぼうに言い放ち外に目をやった。
「急に仕事が入ったんで何度か電話したんだけど繋がらなかったぞ。」
不機嫌そうに言い待ち合わせた相手は目の前の椅子に腰掛けた。
「ちょっと途中で落としたら壊れた。」
「それなら仕方ないな。遅れてすまなかった。」
待ち合わせの相手である、叔父の木村誠司は不機嫌そうな顔を取り繕いながら謝ったあと、何事もなかったかのようにブレンドコーヒーを注文した。
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