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「どうしたエース、物思いに耽って?」
彼は声のする方へ、首を傾けた。
「……なんだ…サッチか…」
期待外れとばかりに、彼は傾けた首を元に戻す。
そして、ため息を一つ。
「オイオイ…何だよその失礼な態度は!?」
左目尻に傷のあるリーゼントの男が、口を尖らせてブーブー言っている。
「…サッチィ……」
「お、おう…なんだ…?」
「ウザイからあっち行って」
「…は!?」
どうやらサッチはウザがられていたようだ。
──…これはこれは…
あまり善いとは言えない彼の勘は、これを敏感に察知した。
「お前アレだろ?エース」
ウザいリーゼントがサイドに分けられた黒髪の中を覗く。
「今日、マルコいなくて寂しーんだろ?」
彼の肩がピクッと動く。
更に、ソバカスの散った頬が赤く染まる。
どうやら、図星だったようだ。
「…ッだったら…なんだってんだよ……」
「………」
狼狽えて地団駄を踏む弟分の姿を軽く想像していた悪兄的には、この素直な反応は、ちょいビックリだった。
むしろ、自分の方が子供っぽくて、恥ずかしさを憶えたくらいだ。
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