P.T.1st

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P.T.1st

「…思い詰めた顔してるね?」 午後10時、自宅リビング。 「あぁ…、何だ、お袋か。」 「捜査の方は進展があったのかな?」 …今、それを考えていた所だ。 ナナちゃん先生に対する妙な不信感…、それは恐らく…、 「自分の受け持ちの生徒が、  事件の捜査なんてやってたら…、  普通…、止めないか?」 「怒られるのは間違いないんじゃない?  先生に怒られて落ち込んでるの?」 …怒られも、止められもしなかった。 それがどうも気になっているのだ…。 ナナちゃん先生の性格はお袋に似ている。 その場の雰囲気に乗っかり易い人だ。 あの時も…、場の雰囲気で答えただけなのか。 6月13日…、午前7時。 「…成程ねぇ、そう言われてみたら、  何か怪しく感じて来たな。」 学校へ行く前に、希望の家に寄り道し、昨日の事と、昨夜俺が考えた事を話した。 「ってか…、ナナちゃん先生って、  真実の悪口言うクラスの奴等を、  殆どほったらかしにしてるよな?」 確かに…、未だにクラスの中でさえ、俺への噂話は、留まる事を知らない。 …ナナちゃん先生が故意に広めている? 「先生を重点的に調査するべきか?」 「気乗りはしないがなぁ…。」 午後1時、昼休み、屋上。 「まだ何か聞きたいの?」 俺はナナちゃんを呼び出していた。 「先生は、何故4階に来たんだ?」 「…音楽室に用があったの。」 「何故、視聴覚室側の階段を使った?」 「教員用の御手洗いが左側でしょ?  そこに寄ったからだよ。」 「東雲の遺体を見付けた時。  何故、あれ程冷静に指示を出せた?」 「…そこはノーコメント。」 「遺体がある事を知っていたからか?」 「私が彼女を殺した犯人なら、  現場に近付いたりはしないでしょ?」 …この対応だ、違和感を感じるのは。 俺の言い方から考えて、疑われているのは明白な筈だ。 それなのに弁解も釈明もない…。 子供の戯言とでも思っているのか、この不敵な対応が気に入らない…。 「…あんたが犯人か?」 「容疑者は真実君の方でしょう?」 …そうか、これが違和感の正体。 先生は俺を“挑発”しているのだ。 出来るものならやって見ろ…、そんな態度が、言葉から滲み出ている。 「…俺は止めないからな。」 「…どうぞ御自由に?  先生は止めた覚えはないけど?」 そう言い捨てて、先生は帰って行った。
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