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P.T.4th
6月15日、午後18時、自室…。
「本当に誰も知らなかったのか?」
「手当たり次第に聞いてみたけど、
影も形も掴めなかったよ。」
「俺の方でも当たってみたんだけど、
こっちも同じだった。
やっぱり噂は噂って事じゃないか?」
東雲の恋人の情報は得られなかった。
あれだけの情報網でも分からないとなると…。
…やはり希望の言う通り、ガセネタだったのかも知れない。
「今更だけど、東雲さんの恋人を捜して、
それから…、どうするの?」
「ナナちゃん先生との接点を探る。
そこに何かありそうな気がしてな?」
「だったら視点を変えてさ。
ナナちゃん先生の彼氏を探ってみたら?」
希望にしては名案だな…。
その方が幾分か探し易いだろう。
ナナちゃん先生は人気もあるし、俺達の担任なのでクラスメートにも聞ける。
「そうだな…、そうしよう。」
「私…、先生の彼氏さん知ってるよ?」
愛衣が挙手しながら言い出した。
…というか、何で知ってるんだ?
「先生の彼氏さんは刑事さんだよ。
…クラスの女子なら皆知ってるけど?」
待て待て…、彼氏が警察だと…!?
ならば先生が犯人の可能性が低くなる…。
身近に刑事が居て殺人などする筈がない…。
…いや、逆に捜査の対象から逃れやすいか?
もしかしたら…、学校に来た刑事の中に、先生の彼氏が居たのかも知れない…。
「愛衣…、先生の彼氏の名前は?」
「確か…、武藤…、だったと思うよ?」
…やはり、あの場に居たのだ。
俺をお袋の所へ連れて行った刑事…。
あいつは確かに武藤と名乗った。
だからこその…、あの自信か…。
「警察と先生はグルか…。」
ならば…、俺のやっている事は…、全て無駄だったのではないか…?
どれだけ追い詰めようとも…、どれだけ証拠を突き付けようとも…。
警察に握り潰されたら…、終わりだ。
「真実、諦めるのはまだ早いぞ?」
希望が俺の肩に手を添え、そう言った。
「何か良い手があるのか…?」
「身を持って体験しただろ?
今の御時世、噂ってのは怖いんだよ。
それこそ、教師生命を脅かす位な。」
…相手の策をそのまま利用するか。
確かに、それなりの効果はありそうだ。
「…やれるか、希望?」
「やってやれない事はないさ。」
俺達は最善手を見出した気がしていたが、愛衣だけは…、その表情が晴れなかった…。
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