1人が本棚に入れています
本棚に追加
P.T.5th
6月16日、午後17時、放課後。
俺達は終業時間ギリギリまで、“ナナちゃん先生が犯人である”
…という噂を流し続けた。
俺は愛衣の役員会が終わるのを待ち、2人で状況を整理しながら帰る事に。
希望は…、難しい話は任せる。
と言って1人で先に帰って行った。
後は休み明けの戦果を待つばかりだ。
俺を嵌めた報いをその身で受けるとは、思っても居ないだろうな…。
「真実…、今更だけど…、
もう止めよう?こんな事…。」
愛衣が、暗い表情でそう言った。
「先生が犯人だって証拠は無いでしょう?
こんなのただの誹謗中傷でしかないよ。」
「言っている事は理解出来るが…。」
先生が犯人である証拠を掴む為の策だ。
現状、手掛かりが無い以上…、相手の出方を窺うしかすべき事がない。
「…真実、忘れたの?
先生と東雲さんには接点がないの。
東雲さんの彼氏を探すのが、
先生の彼氏を探す事に擦り変わって、
そこから話が可笑しくなってない?
少し…、冷静になってみて?」
「…先生が犯人である事は間違い無い。」
「それは、何を根拠に言ってるの?」
根拠は…、先生の挑発。
「………。」
それだけ…、それだけで犯人扱いか?
そもそも…、あれは挑発だったのか?
“まぁ、挑発に聞こえないでもないな”
希望が言っていた台詞だ…。
あれはそう捉えようとすれば、そう聞こえもする…、という意味だろうか?
「…少し頭を冷やして考えてみて?
私も…、最初から整理してみるから。」
気が付けば、そこはもう家の前だった。
愛衣は、俺が口を開く前に行ってしまった。
…俺は、間違っていたのか?
午後20時、自宅リビング。
俺は、お袋に先生を疑っている事を話した。
1人で考えていても…、何も浮かばなかったからだ。
「真実、忘れてる事が1つあるよ。」
「…忘れてるって、…何をだよ?」
お袋は微笑みながら,優しい口調で言った。
「被害者は背中を指されて亡くなった。
背中って言うのは筋繊維が集まってて、
凄く刃物を通しにくいの。
心臓に届くまで刺そうとしたら、
相当な力が必要になる。
例え女の子の背中であってもね?
犯行は授業中だったのなら、
心臓を突かないと悲鳴を上げられる。
両手で体重を掛けながら刺せば、
狙いが外れる可能性が高くなる。
しかも現場は突き当たりでしょう?
そんな事してたら逃げられちゃうよ?」
最初のコメントを投稿しよう!