~ 一話 ~

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「砦の周囲は崖、入り口はひとつ。籠城するには最適な場所ですな」   広げられた砦周辺の地図を見ながら語る趙雲に、公孫賛はひとつ頷いて返した。   「あそこはもともと大きな川だった場所が干上がって建てられたら砦だからな。本来は表と裏の二カ所に入り口があったんだ」   「それが今は表の門だけというのは?」   「崖崩れさ。裏門側の崖が雨で緩んで崩れたんだ」   砦の裏門側も半分は土砂で埋まってると言う公孫賛に、趙雲は持っていた槍を掲げて笑みを浮かべた。   「ならば一騎当千の武を持って正面から打ち勝てばよかろう」   自信満々な趙雲の言葉に、公孫賛は溜め息と共にうなだれた。   「籠城してる奴らに真っ正面から突撃してどうすんだよ。弓矢で迎撃されて無駄な被害が出るだけだ」   俺が趙雲の案を却下すると、公孫賛は安堵の表情で頷いている。   「ならば鳳穿殿は何か名案があると?」   ニヤニヤとした笑みに苛立ちを感じながら、その笑みの妖艶さから視線を逸らし俺は地図を見て頭に描くシナリオを言葉にする。
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