5人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「……ッ」
怒り狂いそうな程の熱量を、荒い息遣いと全身での呼吸で何とか保っている男がいる.
理不尽な仕打ちによって奪われた、大切なモノたちへの居たたまれなさと――
謝罪、罪悪感、困惑、不安など、様々な思いが沸き上がっては絶望へと変換されていく.
涙は枯れ果て、喉の渇きが激しくなった頃…
不意に空気が冷たくなるのを感じた男が、右側に視線を移すと…
「ウワッ!!」
小さな男の子の影が、フラフラと横に揺れているのが見えた.
(な、何だよ.脅かすなよ…)
心の中で囁くと、聞いていたように影がピタッと止まる.
斜め左に倒れていたところで、一時停止したように動かなくなった男の子に内心ビクビクの男.
すると次の瞬間、ニタァと笑う横顔が現れ一気に影が大きくなる.
一瞬のうちに男の元まで届きそうになった影に、男は身動き一つ取れずに硬直していた.
最初のコメントを投稿しよう!