ルーニーグゥは微笑ったんだ

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   なぜ魚が空を泳ぐのか、何処へ向かうのか。どうして泳げるようになったのかは、まだ誰にもわからない。  けれど、今は魚だって空を飛べるのだ。 「あ、ちょっとそれとってもらえる」  手をヒラヒラとさせて、彼女は僕に言う。見れば、その先には長方形の小さな箱があった。  沢山の画材に埋もれた彼女。絵の具だけでも種類がある。他には色鉛筆やパステルや。  みんな彼女の手が届く範囲にあるのに、その小さな箱だけは少し離れた場所にあった。  その箱に手が届かないのだと、彼女は一生懸命に手を振って僕に訴えかける。  少しは動けばいいのに。  僕からだと簡単に手が届く距離にその箱はあるので、寝そべったまま手を伸ばしそれを引き寄せた。  それは、まだ真新しいクレヨンの箱。  手に取り、ついでに僕はその蓋を開けてみた。  並んだ十二色のクレヨン。中に入っているクレヨンは、まだ新しいままで十分に長さもあるはずなのに、なぜか赤の一色だけが極端に短くなっている。  そこだけ目立っていた。 「? 赤だけ無いよ」 「ああ、それね。私にもわからないんだけど、赤だけすぐに無くなっちゃうの」 「赤が好きだから?」 「好きだけど、なぜかクレヨンだけ」  本当に不思議だと彼女は首を傾げる。彼女にも不思議と思うことがあるのか。  僕は体を起こすと彼女に歩み寄り、その箱を渡してあげた。 「ありがと」
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