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だから。
今年もやっぱり駄目なんだと思う。
僕はそう思うけど、決して彼女には言わない。
だって、言ったって無駄なのだから。
「ルーニーグゥはぁ~。ほにゃほにゃふーん」
わけのわからない歌。
音楽を流さなくなったラジオの代わりに、その歌がこのアトリエを巡る。
明るいはずなのに、空は暗い。
目を瞑ればどこか遠くで水の匂いがする。
音楽を流さなくなったラジオは、ただ無機質な声を絞り出すだけ。
――発達した雨雲により、今日は雨が降ることでしょう……。
* * *
「……て……きて」
真っ暗な視界。
そのどこかで声がする。
「……ねえ……おきてってば」
その声が徐々に大きくなる度に、僕の意識もハッキリとしてくる。
どうやら僕は寝てしまっていたらしい。
その事に気づくと、暗闇だった視界に僅かに光がさす。
「ねーえ。起きてよ」
ゆさゆさと体が揺さぶられる。
メイだ。
彼女が僕を起こそうと必死になっている。
嗚呼、でも。
ごめん。僕はやっぱりまだ眠たいんだ。
目も開かないし開きたくない。
頭はまだボーっとしていて意識もうろうって感じだし。
「うぅん……」
だから。
僕は寝たフリをする。
どうか諦めて。
「……起きないとチュウするよ」
飛び起きた。
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