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山本「つまりはこうだ。私は警部としてとある事件を調査中に何者かに殴られ気絶した。
そういうことだな?」
美知「その通りです。
で、何か分かりそうですか?」
山本「ん~。
もう犯人も捕まっているということだし安心だろ。
私は治療に専念させてもらうよ。」
美知「えっ!?
ちょっと、警部!
何言ってるんですか。
捜査に行かなきゃ…」
山本「美知君。
今の私が事件のことなんか覚えているわけないだろう。
まだ、自分が警部だったってことにすら驚きを隠せない状態なんだ。
まっ、この件については犯人も分かってるのだろ?
私をこんな怪我をさせた犯人の面を見てみたい気持ちもあるが
もう解決した事件なのだろ?
記憶を失う前の私は天才だったのかもしれない。
だが、今の私はもうすっかりそんな事件のことなんて、何から手をつけて調べたらいいのかも分からないズブの素人同然だ。
そんな奴が調査なんてしたって足手まといなだけだろ。」
美知「そっ、そんな~」
…………
美知は悲しげに山本を見つめ、少しの沈黙が生まれた。
しかし、美知は記憶を失なっているからといって、尊敬している警部本人には間違いない。そう思い直し、山本警部にもう一度、もう一度だけ訴えるため、ここが病院であることも忘れて大声で叫んだ。
美知「は、犯人は確かに捕まっています。
で、でもそれはあくまでも形の上で終了した、というだけのこと。
山本警部の言ってた犯人が恐らくこの事件の真の犯人なんです!
だ、だから頼みます!
一緒に、一緒にこの事件をもう一度追いかけましょうよ。
真の
真の事件解決のために!!」
山本「分かった。
分かったから、少し一人にさせてくれ。
私も今目覚めたばかりだ。
何が何だか頭の整理がつかないんだよ。」
美知「……あっ、はい
すいませんでした…。
大声出して。
変なこと言っちゃて………
そ、そうですよね。
記憶喪失だと今知った相手に頼み事なんて、非常識ですよね。
失礼しました。」
美知はそう言って、不安を抱えながらも病室を後にした。
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