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一限目
生徒用のコンピューターに映し出されるのは、森の中と思われる背景に居座るように堂々と置かれた黒くて重そうな金属の筒。
重砲か迫撃砲、まぁそこら辺のカテゴリーの兵器だろうと、『眞柴想一(ましば そういち)』は郷土の緑を思い起こさせるグリーンアッシュの髪を、右手でポリポリと掻いた。
「――えっー、この120mm迫撃砲 RTは重牽引車によって牽引が可能であり、且つ射程は、軽榴弾砲に匹敵する約13,000m。普通科の中では最大の火砲で愛称はヘビーハンマー――」
教卓の前で、特徴的な抑揚のない声が教室内を支配する。まるで感情の無いロボットの様だ。とても冷たい。
「うん、前に観たから知ってるよ」と想一は、この前消灯時間の間に鑑賞した戦争映画のワンシーンを思い出しながら、得意気に笑って呟く。
結構目が疲れて来た。ふと、授業終了まであと何分だろうかと、残り時間が気になった。
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