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『身近な非日常に触れたい』
これが想一の東都防衛学院を志望した理由である。
面接の時、彼の志望理由を聞いた時の教官のあの驚いた顔が、ふと彼の脳裏に浮かんだ。教官のあの顔が演技なら、助演男優賞ものの演技だ。
「はァ……わかってるよ」
自分でも自分の事をませたガキだと思う。恐らく原因としては、映画監督であった父と、女優の母によるそこらの映画や昼ドラにも負けないような愛憎劇を、間近で見ていたからだろう。
悪い癖だ。ネガティブな自己分析。
「フフッ」
悪い癖だと思いながらも、想一は自嘲気味に薄ら笑った。深い回想に入り浸っている間に、気付けばもう授業終了まで5分を切っている。
机の下で、想一は誰にも見えない様に小さくガッツポーズをした。
そして
教室中に響く至福の鐘の音が、彼を束縛から解放したのだった。
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