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次の日の早朝、メイドから良からぬ話を耳にした白雪はその良からぬある人物を部屋に寄越した。
扉をノックする音が響き渡る。
「…お入りなさい。」
「失礼いたします…。」
そうして扉の向こうから現れたのは、例の茶髪。
「松井、話は春子から皆に伝わってるかしら?」
松井基晴(もとはる)は、白雪から視線を反らしながら小さな声で「はい…」と応えた。
「お前、今日は学校の理事長の計らいで休校日だそうですわね。…なぜこの屋敷に早朝からいるのですか。」
「いや…、この前のこともあったし…次またもし姫が誘拐されるようなことがあったら…アズサが黙ってないし…」
長い美しい髪をサッと払うと白雪は基晴の前まで歩み寄り腰に手を当てて大きく息を吸い込み……
「大馬鹿者ですわっ!!!!」
まるで雷が落ちたような衝撃を耳に喰らった基晴はついその場に腰を抜かして倒れた。
「松井は自分かわいさにわたくしのことなど何も考えていませんわっ!わたくしの為と言いながら、結局は自分の為ではありませんこと?!」
愕然と基晴は白雪の言葉を受け、何も考えられなくなった。
ぼんやりしてしまった基晴をいつの間にか部屋に入って来ていた例のふわふわ金髪が華奢な片腕でヒョイと担ぎ上げ肩にかける。
「姫、ごめんね。ハル、悪気、無かった。」
「宮沢…、わたくしこそごめんなさい。」
「姫、謝る、しなくていい。でも、心配、だから春子、一緒…」
「ええ、井上1人だけにと、お伝えした通りですわ。」
ぺこっと宮沢は頭を下げると基晴を担いだまま部屋を後にした。
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