白雪姫の逃亡

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教室棟の一番上、まさにガーデンの名に相応しい全面ガラス張りの緑豊かなその教室は指紋照合をクリアしなければ入ることは許されない。 「では…白雪さま、放課後お迎えにあがります。」 「ええ、待ってますわ。」 指紋認証システムの機械に白雪が手をかざすとガラスの扉が左右に開ける。 白雪の他には後4人の生徒が入室を許されている。 その中の1人、柴山あずさ。 彼女もまた白雪の護衛の1人だ。 黒い瞳に小豆色の肩まで真っ直ぐな髪の慎ましやかな女性で、家が財閥ということもあってこのクラスに属している。 「ごきげんよう、柴山。」 「おはようございます、姫。お加減いかがですか?例の事件以来伏せていらっしゃると耳にしました、松井や宮沢がついていながら…大変申し訳ございません。私の不徳の致すところです。」 あずさが席を立ち上がり白雪の前に跪いて見上げる。 「どうか松井や宮沢を含め私たちをお許しください。」 そんなあずさには視線も合わせずに白雪はしばらく黙り込んだ。 「…姫?」 「柴山、井上からお前にもわたくしの話が伝わっていなかったのですか?今日はわたくしとお前はただのクラスメイトですわ。早くなおりなさい。恥ずかしいですわっ。」 もどかしそうな表情を浮かべあずさは白雪の言う通りに立ち上がり席へ渋々戻っていった。 そして何かブツブツ呟いている、がその言葉は彼女にしかわからない。 白雪は教室の中をぐるりと見回しニヤリと嫌な笑みを浮かべた。
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