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一年生は二番目に試合を行う。去年やって慣れた二年生が初陣を飾り、締めは当然三年生が受け持つ。
年功序列でなくて良かった、と心の底から思う。
控室に行くための階段を下っていると、
「……快人」
上から、呼び止められた。
何の前触れもなかったので、少し肩を震わせてから振り向いた。
「御影(みかげ)先輩じゃないっすか」
立っていたのは俺より二つ年上の御影幸助(こうすけ)先輩。
中学時代からよく面倒を見てもらった、恩義ある存在だ。
だが、いつもより覇気がないように見える。体調でも悪いのか?
彼はちょっと言い淀んでから、歯切れの悪い口調で言った。
「今日の試合…………、いや、頑張れよ」
とっさに本題を隠したような、釈然としない言葉。
「はぁ……?頑張ります……」
何だかすっきりしない気持ちのまま、控室へと向かった。
――――
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