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ボディの継ぎ目が見える程近くにいる戦闘機。それに乗っているのは、指導員の青年だった。
コクピット越しの青年は敬礼をし、昨日の夜と同じ様に泣いている。
何故泣いているのだろう。少年兵が疑問に思った頃、青年は更に距離を詰め、間もなく機体に衝撃が走った。
翼が折れて吹き飛び、機体は煙を吐きながら一気に落下していく。少年兵は死の瞬間まで、状況が掴めず呆然としていた。
「……なんと、あの指導員がスパイ?」
「本日の奇襲作戦を記した暗号文が、彼の所有物から見つかりました。間違いありません」
「そうか……」
「それで、指導員はどこに?」
「奴は行ったよ。爆撃機が一台余っていただろう?あれに乗ってな」
「は……はあ。逃げたと言う事でしょうか」
「この嵐だ。燃料も足りないし、まず助からない」
「それでは何故?」
「……奴は奇襲作戦を敵に知らせておきながら、作戦の中止を求めていた。表向きの指導を続けるうちに、少年兵に愛着が湧いたのではないか?」
「はあ……何とも奇妙な話です」
「さあ、我々も行かなくてはな。若者ばかりに死なれては、格好がつかん」
「はい、行きましょう。国を守る為に」
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