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その日はあいにくの曇り空。
隙間無く天を覆う雲は濁り、使い古した雑巾のような薄汚れた色を呈していた。
ゴウゴウと唸り駆け抜けていく強風の中、見上げる顔を下ろせば、騒々しく荒れる海がどこまでもどこまでも広がり、見る者に嵐の到来を予感させる。
そこはかつて空港だった場所だが、戦争が始まってから軍に徴用され、苦しい戦局になってしまった今では、利用される事は殆ど無かった。
濁った曇り空、ザアザアと荒れる海。落ち着かない景色の中に、揃って黄土色の粗末な軍服を着た、十数名の少年達が立ち尽くしている。
少年達の中には、まだ女も知らないであろう年頃の者、若さどころか幼さを残す者も見受けられた。
彼らの視線の先には、上下二枚の平たい翼に、大きなプロペラを携えた、小振りな戦闘機の数々。
今日の為に訓練を重ねてきた彼らは、特別に用意されたこの戦闘機に乗り、祖国を侵略せんと迫る敵国へ、奇襲の爆撃を行う予定であった。
だがよりによって作戦当日、いつ雨が降り出してもおかしくない荒天なものだから、彼らは作戦の中止を案じ、不安を隠せずにいる。
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