cherry

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眼鏡を外した潤くんが、 私の方を向き、 朝の光の中で眠る。 その手は私を無意識に引き寄せ、 力をなくしたかと思えば、 こめる。 ……でも、まだ夢を見ている。 目覚めるのは、ほんの少しだけ先…… だろう。 星を見て、 手を繋いで、 ほんとうにただ静かに、 私は潤くんの 初めての女(ヒト)、になった。 暗闇の中、 最初は大学の匂いがしていた 潤くんは、 男の子の匂いに 変わっていった。 技術的なことは どうでもいい。 最初は誰もわからない。 ただ潤くんが、 私とそうなりたい。 ただ、潤くんが、 私の隣で歩きたい。 その想いに、 応えたかった。 背中が痛くて、 そっと起きあがる。 私の髪が影となり、 潤くんの胸で、生物のように 揺れた。 「………ん………起きた……?」 眼鏡をしていない潤くんは、 その目の間に赤く跡がついている。 恥ずかしそうに一旦目を伏せ、 「…………こう言うの…… あんまり好きやないけど……」 ……って……何が……? 「……え、こう言う事するの?」 「……あ、違う違う、ってそうやなくて、あっちゃんとはやっぱり……したいけど、 ……こうなるの…… 早すぎたよなって」 …………ああ……そこ。 「……でも……いずれはしたと、 思う」 「……やけど……やん」 潤くんは言い、 反省をし、 私の髪を撫でた。
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