cherry

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「……浄化してて、良かった」 冗談のように、私は言う。 でなければ苦しかったから。 潤くんの真っ直ぐさは、 光をそのまま跳ね返す鏡のように、 眩しく、辛い。 「……フフ…………ほんまに。 じゃあついでにもっと、 ひく話を」 潤くんは言って、 私がもたれやすいように、 角度を交えた。 「……実は俺、 ずっと待ってた」 「…………何を……?」 「ん……、姫を」 「……姫……?」 「……うん、姫。 ほら、女の子って待ってるんやろ?王子さま」 「…………ん、ああ……」 やったら私は例外。 そんなこと、思ったことも なかったな。 「……そ。……で、 やからつまり俺は、 それの、男子バージョン。 ……あっちゃんに会った時、 俺はずーっとこの子を待ってたんやって……思った。 やから誰とも付き合わへんかったし、そう言う事もせえへんかったって…………。 …………ひいた?」 眼鏡レンズの端に虹。 それを見上げて、 「……ううん」 って言う。 国宝級。 リクがそう言ってた男の子。 は、 賞味期限切れの私の隣、 はにかんだような笑顔で、 笑っていました。
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