lemon

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……………………へえ。 それだけ言うとリクは電話口、 何か詰まらせたように 咳をした。 あれから、 1限だけある講義を受けに潤くんは大学へ。 それが終わればスタ〇のバイトが待っている。 『……びっくりした……?』 潤くんとそう、なった事。 『……別に。 いいんちゃう。 それよりちゃんと話したん?』 リクと私の間にある白線は、 潤くんとそうなった事で 再び濃く引かれる。 石灰の立ち上るような、 ほど、濃く。 『……うん。 それは……した。 ずっと……付き合うって、 あ、つまり、 恋愛も、病院も……って、 言ってくれた』 俺の為に生きてよ。 そう言われた事は 言わずにいた。 『……ふうん。 って事は……明日も?』 『……うん』 潤くんが行き、 私が部屋に戻り、 そしたらリクが電話をかけてきた。 明日藤木先生が病院で 待っている事、を、 告げるために。 『……じゃあ俺はもう行かんでええな』 『……なんで……?』 『……なんでって……なんでよ?』 『……レポートは……?』 そう訊くと少し間がある。 そして、 『……考えとく……』 って、リクは言った。 『……今から行くとこあるし、 もう切るな』 とも……。 リクの電話が切れると、 もうかけてはいけないと思う。 それは、 俺と生きてよと言うたんが 潤くんで、 リクではないと言う、 事実だけが、 ここにあるから。 ブーンと小さく携帯が震え、 潤くんからメールがくる。 【明日、何時やったっけ?】 私の病院に付き添うせいで、 大学も、バイトも、 調整しなければならない。 それはきっと、 潤くんを大切に育てた両親が、 望んでない事。 【無理せんでええよ。ほんまに】 返す、と、すぐ来る。 【無理してない。 あっちゃんが、大好きやから】 人を想う気持ちは、 スケジュール帳の無い世界へと、 どれだけ冷静沈着な人間でも、 迷いこませてしまう ものだ。
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