greap

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警察から連絡をもらったんは、 その、観覧車の日から 2週間後、やった。 リクは有言実行。 ほんまに予備校に通い始め、 潤くんと私はいつもと同じ、 生活を送る。 でももうこの関係を、 どうにかしないと…… と、みんなが思ってた、初夏。 最初に鳴ったんは、 リクの携帯電話。 『……ご本人さんの携帯に 色々連絡先はあったんですが、 全く繋がらなくて……。 これが初めてですよ』 ……そう、言われたと云う。 聞きなれない警察署の名前。 おっちゃんが、自殺した。 それこそ有名なその山の中で、 靴をきちんと揃え、 その上にあの日被っていた ハットを置き、 ネクタイを何本も繋いで木にくくりつけ、 遺書にはたった一言だけ、 みなさん、お世話になりました。 それも泊まっていた旅館の 割り箸袋に、 たった、一行、だけ。 その日は珍しく3人が狭い部屋にいて、 電話を耳にあて、 無表情に頷くリクを、 食い入るように潤くんと 見つめた。 朝で、 洗濯機が回っていて、 潤くんは昼からバイトで、 リクは昼から予備校の自習室で、 私は2人の間に挟まるように、 テレビをぼんやり見ていた、 朝のこと。
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