greap

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「……信じてみ。 この春田 チカさんを。 言うとくけど、 そこらへんのチャラい男よりは 口固いで。 その貝には……負けるかもしれんけど。 なーんてね」 言って私の手の中、の、 さくら貝を見る。 チカに言っても、 言わなくても、 何も変わらない。 それを受け止めるんは、 自分しか、ないから。 リクが私を、 受け止めて、 くれたように。 「……聞かんかった事にしたるから、 言ってみ」 波が岩にあたり砕ける。 この地球上には今、 私とチカしかいない。 そう思い込んで、 私は言った。 「……隣、来てくれる?」 子供みたいに波を蹴るチカ。 チカの携帯が鳴り出すと同時に、 私の隣にズサッと座る。 「……ふふ。とらへんかったら、 メールきた。 どこにおんねん、アホ! やって、潤。笑かす。 ……で……? そんな顔するほどの悩みとは? ……はは…… まさかあいつ、結婚してるとか」 茶化すチカに、首をふる。 そんなことはどうでもいいと 思ったから、 私はリクの…… 所に来たのだ。 「……耳かして」 「……なんでよ、 ここ、あんたと私の二人っきりやで」 そうやけど…… そうしたかった。 「……もー…… わかったわかった。 そんな顔せんといて。 耳、貸すし」 チカが頬を、耳を、寄せる。 ピアスのcrossがゆらゆら揺れて、 私はそっと、 それを告げる。 横顔のチカの目が、 一瞬大きく見開いて、 それから静かに、 ゆっくり閉じた。
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