kiwi

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大田 いずみ なる人物からの電話を 受け取ったんは、 りんごをもらった日、から1週間ほど進んだ先で、 そのか細い声に、 全身が細かな汗をかいた。 いずみ、イコール 通称いずみんは、 会えますか……? って訊いた。 私はこう言うもので、 こう言う事情で、 とも言わず、 あおいさん?ですよね、と訊く。 そう切り出すには、 事情をすべてわかってるんやと、 ぼんやり思った。 互いの中継地点から 少しだけこちら寄り、なのは、 呼び出したいずみんの 配慮かもしれない。 「……えっと…… 初めまして……」 そのcafeに 着くと、 いずみんにすぐ私は気づいたが、 いずみんは暫く気づかなかった。 「……あのぉ…… ひょっとして私の顔、知ってました?」 長く黒く艶やかな髪が、 カフェオレの湯気の向こうにある。 「……あ、はい。 写真1度見たことがあって……」 「…………あぁ。そうなんや」 一瞬笑顔で敬語を崩し、 すいませんと慌てて訂正する。 思ったとおり、かわいい子やった。 一瞬の笑顔が終ると、 いずみんがじっと私を見る。 「……めっちゃきれいですね、 あおいさん。 陸人はそんなん一言も 言うてなかったけど」 残念そうないずみんの瞳。 かわいさときれいさは、 勝敗がつかない。 「……いずみ……さんもかわいい」 いずみん、と思わず出そうになって口ごもる。 いずみんは謙遜すると、 いつまで誉めあっても仕方ないんで、 単刀直入に。 って、本題に入った。
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