kiwi

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初めて聞くこと。 が1つだけあった。 リクが私の元に行きたいから、 別れてくれと頼んだ、こと。 「……まあでも…… 私が陸人を好きで…… 手も出されてへんのに出されたって騒いで付き合った訳やし、 仕方ないかなとは……思いましたけど…… とりあえずその時は、 自殺してやるって暴れました」 僅かで穏やかな笑顔。 別れた後の小康状態。 いずみんの指先が ストローの袋を折る。 「……ごめん……なさい……」 言うといずみんは、軽やかに 「……いえいえ」 と言った。 「……でも」 いずみんが上目使いに 私を見る。 「…………悔しいです」 その口調があまりにも冷静で、 だからこそまだ、 ふっきれてないんやと思う。 別れ話をされる前から 時々リクの携帯を見ていたと いずみんは言った。 「……こそこそ暗証番号変える人やないんで……。 そう言うとこ好きなんですけど、 やっぱりあなたへの履歴やメールが沢山削除されずに残ってたのは、 すごくショックで……。 アオって登録してあっただけやけど、女の人やってなんかわかりました。 それであなたの番号だけメモって、 もうええ加減問い詰めようと思ってたら、別れてくれと」 コホと小さく咳をし、 蛇腹になったストロー袋を 指でなぞる。 「……あなたにこれまで 何度かかけようとして、 やめたんです。 そんな女になりたくないって、 思いましたから。 やったら陸人にかけて恨み事言う方がええって。 でも陸人が全然電話とらなくて、 だから私、実家にかけたんです。 そしたら友達と暮らしてるって。 直感で……あなたと一緒やなって」 物語を話すみたいに いずみんは話す。 自分の事やのに、 催眠術にかけられたように 少し眠くなって、 それをどうにかするために、 こっちから話そうと思うと、 先にいずみんがまた、 話す。
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