kiwi

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「……でも不思議なんですよね。 なんで陸人は何もしてへんのに、 つまり私に責められて付き合ったのか」 ……そう。 ……そうだ。 でも……わかる。 陸人もきっと誰かに、 必要とされたかった。 そんな猿芝居に付き合ったのは、 そうなのだ。 ありえなくても、 なんでもよくて。 「……それはいずみさんの事が…… 好きやったからじゃ」 喉元を流れていくレモンティ。 いずみんは、ふふと笑った。 「……な訳ないですよ。 あの時はオッケーしてもらって浮かれてたんでよくわかんなかったんです……。 でも別れ話の時、 ……ああ陸人がほんまに人を好きになる時は、 こう言う顔をするんやって知りました」 あの頃まだ、 私は潤くんと付き合っていた。 もしリクが来たところで、 受け入れなかったかもしれない。 それでもリクの心の爪先は、 私に真っ直ぐ向いていた。 そこが不毛の地でも。 もう誰も自分を必要としてくれなくても…… かまわなかったの……? 「……私の事…… リクになんて……聞きました?」 訊くといずみんは答える。 「……好きな人が出来た、と。 ただそれだけです。 陸人にそう言われて暫くは、 朝も夜も無いような日々を過ごしたました。 ……けど……、 陸人の事をわかってちゃんとしてくれるような人ならええかなと…… 無理矢理自分を納得させました」 いずみんの答えは、 蛇足だらけ、だ。 けれどそれぐらい誰かになにかを ぶちまけずに過ごしてきたんやなと、思わずにはいられなかった。 「……どこで知り合ったんですか?」 そう訊かれ、 全て知ってるような顔の いずみんが、 何も知らない事を悟った。
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