strawberry

2/40
213人が本棚に入れています
本棚に追加
/295ページ
思えばチカはずっと、 ウェスタンブーツを履いている。 それは季節がどうであれ、 関係がない。 色ちがい、柄違いで6足持っていると、チカは言った。 「……中2の時やったっけな。 潤がな、 あのアホが珍しく私の靴をほめてん。 ……俺そう言うの履いてる女の子好きって。 確かそんなウェスタンガールが主役の映画流行ってた頃やと思う。 ……で、 そっからずっとこれ。 言うた本人はすっかり 忘れてるやろうけど」 3月やと言うのに雪が降って、 すごく寒いのに なんとかフラペチーノを食べているチカ。 目線をずらすと、 笑顔で働く潤くんが見えた。 誰かに言われた言葉で、 その人の人生が変わってしまう事もある。 笑顔で接客中のあの男の子もまた、 チカの人生を変えた。 ウェスタンブーツをずっと、 履いてる人生に。 「……それよりさ、 あおい、あんた帰らんでええん? もうとっくに終わってんねんやろ?」 チカが不思議そうに私を見る。 「……ん? ………うん。 もうちょと……だけ。 なんか用事ある?」 チカを呼び出したのは私。 リクの入試の最終日。 滑り止めに受けた、 ここが最後。 試験が終わったと、 メールがあった。 でももうそれも2時間も前の話で、 今頃リクは、 マンションに戻っている。 「……別に何もないけど。 ほら……、入試終わったら話するって決めてんやろ? やからここまでずっと我慢して 話に手ぇつけへんかったんちゃうん?」 何の恥じらいもなく 店の紙ナフキンで鼻をかむと、 「……スッキリしたら? 私の鼻みたいにさ」 って、チカは言った。
/295ページ

最初のコメントを投稿しよう!