最終章~lovely days~

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「うう……このヤロー、 結局それってノロケやんかっ!」 更にド派手でパンキッシュなチカに言われ、 思わずへへっとつまらない笑い方をしてしまう。 リクの元に戻ったあの日から、2年。 ほんまにアッと言う間やった。 チカはあれからすぐ、 私たちを見届けるように 大学をやめ、 服飾を学ぶため ロンドンへ留学した。 今だチカにちゃんと返事すらしていない潤くんは、 彼女もいず、 大学の4回生となり、 本気でアーティストになるか、 それともどこかへ就職するか、 はたまた父親のスーパーを継いでしまうか、 で、目下お悩み中。 そしてリクは少し時間をかけて K大医学部まで通い、 手術を受けた後、 正式に戸籍が藤木 陸人、 と言う男の子になった。 今の大学で、 陸人が女の子やったと知るものは誰もいない。 ただ、手術はすれど今だ体には自信がないようで、 『柏木に今日スーパー銭湯誘われたけど行かんかった。 ずっと断ってたらな、 あいつ何て言うたと思う? おまえまさかゲイなのか、 俺に発情しそうなのか、 って真顔やで。笑かすやろ、 俺にはアオがおんのにな』 って、さりげなく言う。 柏木くんは入学してすぐ リクと仲良くなった友達だ。 私も何度か会った事があって、 真面目そうな外見とは逆に、 中身はまんまお笑いみたいな男の子。 実家は医者の家系でもないのに、 医療漫画に感動し、この道を目指した柏木くんを、 リクはほんまに好きみたいやった。 ……で、私……? そんなに聞きたかった? 私、 私は元気やよ。 病気はあの日タイマーみたいに ストップして、 良くなりも悪くなりも、 していない。
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