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トラックのエンジン音はハンパなくて、 それきりの無言が、 更にそれを大きくする。 「……これ全部部屋に運んだら、 俺帰るし。 後は自分でかたずけられる、はずや」 救いのようなリクの言葉は、 救いではない。 「……この後用事あるとか?」 「……うん。まあ」 まっすぐ前を向き、 ハンドルを握るその手は、 いずみちゃんの為に、ある。 「よーじ。りょーかい。 けど残念。会うの久しぶり」 俳句のように、言ってみる。 あの日からずっと、 思えばリクに会ってなかった。 声と、メール。 友達って、難しい。 「ごめん」 サラリと流すその左頬には、 傷跡がある。 縦に、うっすらと。 その傷のルーツを知りたいと思うのは、 何ででしょ。 「……いずみんとは、会ってる?」 まぬけ質問。 場繋ぎの、 それだけの、 それだけやない、 ちょっと、よこしま。 「……ゼミあるし、ほぼ毎日」 そうでしょうな。 さりげなく視線を泳がせて、 リク観察。 どんなキス、します?あなた。 Hの時、何囁いたりする系ですか?あなた。 とか。 「公私ともにってやつか。 ラブラブっすな」 「…………うん」 素直って、しんどい。
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