213人が本棚に入れています
本棚に追加
/295ページ
借りたマンションに着く手前、
リクが口を開く。
「あのおっちゃん、
薬飲んでる?」
「うん、抗うつ剤。
けど一向に、ですよ。
私がいてへんようなって 、
悪させえへんことを祈る」
「……悪さ?」
「……うん。
例えば、火事。
例えば、人を傷つける。
そう考えると、
自殺の方がマシかも」
コンマ何秒か。
で、
「……ふうん」
って、リクは言った。
「俺思うに、あの人、
がんばって生きてるけど」
頑張って。
って、はて、あれは頑張って?
「……質問」
「……はい、どーぞ」
「それってつまり逆に
私のことディスってる?」
「……は?
そう思うんなら、ご勝手に」
リクが答え、
私の中で怒りが生まれる。
どこにそんな力があんのか。
リクからハンドルを奪う。
けどそんな簡単な事やない。
結局それは呆気なく阻止され、
車体は蛇行。
リクがハンドルを切らなければ、
対向車とは完全に
ぶつかっていた。
最初のコメントを投稿しよう!