orange

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「……いずみん?」 5分ほどしてリクが電話を切る。 「……うん」 「……今日の用事って、 やはり、いずみん?」 「……ですよ。 でもまた今度になったので」 エンジンがようやくかかる。 のにまた携帯が鳴りまして。 ……いずみん。 どうしたの?あなた。 相槌ばかりリクはうつ。 いつまでも軽トラは動きません。 いつの間に、の雨粒。 フロントガラスにボタボタと。 小さな星を隠す雲。 電話の内容、聞こえません。 でも、歌う訳にも、 いかんでしょ? 「……ごめん。 やっぱり送ったらそのまま帰る」 的中。 「……うん。どーぞ」 いずみん、あなたたぶん 泣いてましたね。 ワイパーは、 ロボット音。 雨がスコールのように量増し。 車のスピードは、 やや落ちた。 「……さっきの例え話、 訊いてよろしい?」 「質問……?」 「たぶん、違う」 「じゃ、どーぞ」 リクのスニーカーが、 アクセルを踏む。 その踏みかたも、 好き。 怒らないで、 聞いてくれます? 「……あれは例え話。 として、 リクはお医者さんになるつもりは?」 「……これっぽっちも。 言うたでしょ? カウンセラー志望」 「まあ……聞きましたけど、 しつこく、ね」 カバンの中に、 アメを見つけた。 「……いる?」 言うと口を開けるリク。 かわいいな。 好き。
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