語られぬ一幕

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 このサバイバルゲームにはA~E班、総勢三十名の中学生が参加している。無線から送られる情報では既に二十名近くが戦線から離脱しており、七時の方向に居るであろう三名の敵さえ倒せる事が出来ればB班の勝利は近い。 「…………」  B班のリーダーである橘和美が左手にM4を構え、右手でハンドサインを出す。――――正面に二人、側面に一人。  動きから相手の行動を読むのは基本だが、今回は少々分かりずらい。側面の敵は囮か、偵察か。それとも包囲に来ているのか。  和美は汗で滑るのか、M4のグリップをきつく握り直す。  普段は冷戦沈着で班を率いるのに適任な彼女だが、どうも競争意識が高すぎる傾向にあるらしい。機会さえ巡って来れば確実に突撃命令を出すだろう。策の無いただの特攻で勝てるほど敵は甘くない。 「一三四、大丈夫か?」  ヒーローをイメージしながら疲弊する仲間に声をかける。一三四は色白で、運動音痴では無いが体力と持久力が他に比べると低い。故に和美の命令通りに動く事は不可能だろう。
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