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「橘、取捨選択をしろ。撤退は逃走じゃない。未来への進軍だッ!」
銃弾(正確にはレーザー)が当たらないよう身を伏せているためか、お互いの距離は近い。今にも唇と唇が触れ合うような危うい距離を保ったまま、長太郎は橘に訴える。
その必死の姿を見て心が揺れたのか、それともただ単純に興が削がれたのかは分からない。しかし橘は小さく笑うと、長太郎の頬を人差し指でつつきながら口を開いた。
「顔、近いよ」
武装中学生といえどもやはり中学生。長太郎も青春を謳歌する中学生に過ぎないわけで――――直接的に言うのならば、恋愛経験皆無な長太郎とってその距離は近すぎた。
「わ、悪い!」
急いで身を起こし、頭上を掠めていくレーザーにまた身を伏せる。今度は同じ過ちを繰り返しはしなかった。
長太郎は伏せたまま弾が飛んでくる方に向けトリガーを数度引くと、橘を先頭に撤退を始める。全力で逃走をするのならば、重量や取り回しのしやすさからハンドガンの方が断然良いが、しかしそれだとあっという間に蜂の巣だ。
それ故に長太郎は、ハンドガンをメインウェポンであるM4に持ち変える。そして安全装置を外すと、適当に背後へ狙いをつけてトリガーを引く。
細部まで本物そっくりに作ってあるこの銃だが、実際に撃ち出されるのはレーザーであるために反動は殆ど無く、音も驚く程静かだ。
「――――スイッチッ!!」
長太郎は弾が切れると同時に叫んでいた。レーザーとはいえ、無論エネルギーが切れれば撃てない。
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