当たり前の日常を

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母の命に期限がつきました。 神様は意地悪で,私や弟からお母さんを取り上げるんだって。 まさか自分の母親が…。 お母さんだって自分がこうなるなんて思わなかっただろうな。 病院から家族面談がしたいとの連絡。 最近体調が思わしくなかったから,ある程度の覚悟はしてたけど。 良くなる見込みがありません。 あぁそうか…。やっぱりか…。 分かってたのに,認めたくないから,分かりましたって言いながら涙が止まらなかった。 お母さんに心配かけたくないのに,堪えきれなかった。 延命治療打ち切りの同意書,サインしてしまった。 後は体が蝕まれて朽ち果てるのを待つだけなのか。 おじいちゃんとおばあちゃんには何て言おう? 弟達は事実を受け入れられるだろうか? 女手一つで私と弟3人を育ててくれて,私は結婚する事が出来て,長男,次男は立派に成人して…。 三男がようやく高校生になったのに,こんなのアリ? おじいちゃんとおばあちゃんはまだまだ元気だよ? 親より先に逝く程親不孝な事はないんだから。 それにね,まだ私からの親孝行も足りてないんだ。 これからウザいぐらいに親孝行するんだから覚悟しといてよね。 家族旅行も行ってないし,家族写真も全然ない。 あーあ,今更になってお母さんに甘えたくなっちゃった。 でも姉ちゃんがめそめそしてる場合じゃないと,帰りの電車で自覚した。 気が張ってたからかな。 弟達の前では泣く事なく事実を話せた。 だけどやっぱり泣く場所が欲しい。 愚痴も,弱音も吐きたい。 お母さんとのこれからの,ささやかな日常を記しておきたい。 当たり前の日常も,思い出として遺していくね。
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