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少年は黒に塗り潰された世界を走っていた。足元には一面の水面が広がり、足を動かすたびにパシャリと波紋をうみだしている。
「はぁっ、はぁ、ッ、はっ」
走っている先に何があるわけでもない。それでも立ち止まらないのは、少しでも聞こえてくる声から逃れるためだ。
願いを、願いを、願いを、願いを
繰り返される声は直接頭に響いて、走っても走ってもこの狂ったように止まない声は遠退くことはない。
「はっ、はぁッ、はぁ、はぁッ」
願いを、願いを、望みを、願いを、望みを、望みを
声は更に声と重なり、くわりと頭を揺らす。
「煩い…………ッ」
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