水も滴る……

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「うっ……」 恥ずかしさマックスになった琢磨は、凄い早さで外に飛び出した。 いや、何で飛び出すのよ。 絶対、おかしいって! 「あ、待って! 外は土砂降りよ!」 あたしは止める暇がなかった。 確か琢磨は足が早かったのよね。 あたしも慌てて追い掛ける。 勿論ずぶ濡れ。 正しく『水難』。 占いは当たらずとも言えども遠からず……だ。 あぁ、占いは信じない派だったのになぁ。 ぎゅっ あたしが追い掛けてきたのに気付いた琢磨はいきなり立ち止まって振り返り、力強く抱きしめた。 「琢磨ぁ?」 ずぶ濡れの琢磨に抱きしめられる不思議な感覚。 潤いすぎだろ、あたし達……。 「水も滴るいい女……だろ? 水で美肌になるんだろ?」 馬鹿にされてる? いやいやいや。 琢磨の場合、ただ単にからかっているだけのような気がする。 てか、何でずぶ濡れになって美肌になるのよ。 ……あたしに潤いが足りないと遠回しに言っているのかしら。 「ばかぁ。 意地悪言わないで早く何処か雨宿りするわよ」 思わずあたしは琢磨の手を引っ張った。 あぁ、もう何がなんだかわからないよ。 何で二人でびっしょになのよ。 トホホ。 こんな恋愛ドラマは嫌だ。 「……だな」 あたしに手を引っ張られながら琢磨は優しく笑った。 この状況で何呑気に笑ってるのかしら。 まぁ、ブリブリ怒っているよりはマシだけど……。 この後あたし達が何処へ行ったかは……ご想像で。 雨は激しいけど、今日の琢磨は何となく優しい……ような気がした。 一度は離れたあたし達。 幸薄女と嫌味な男。 自分で言うのも何だけど……強烈な組み合わせだけど、またやり直せるよね。 何てね。 まぁ、何とかなるよ。 明日は明日の風が吹く……ってね。
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